2022年9月7日 6:40:35
Imazu

第二回 日本刀の美しさと切れ味
【「習うより慣れろ。」刀剣用語は意外に簡単】
日本刀の説明には、匂や沸のように、聴きなれない言葉が頻繁に出てきますが、決 して難しいことではありません。
知ってしまうと、何だそんなことかと感じるようなものです。
また、武家の文化が江戸時代の中心にあったがため、その後、日常用いられている言葉にも当然の如く日本刀から転じている例が多々あります。それらも、いずれご紹介しましょう。
【虎徹の姿形(しけい)】
さて、今回は虎徹の脇差を掲示しました。
前回の虎徹の刀と併せてその各部を眺めてみましょう。
まず全体像を眺めると、江戸時代前期の寛文頃の特徴的な、反りを控えた姿格好が良く分かります。
写真のように反りが浅く、切先部分が少し小さくなる姿形を特に「寛文新刀体配」(かんぶんしんとうたいはい)と呼んでいます。
【虎徹の地鉄(じがね)】
地鉄(じがね)は、小板目肌が均質に詰み(鍛着部が密であること)、しっとりとした潤い感があり、その中に木の年輪のような杢目肌や板目肌と呼ばれる鉄の鍛着面がわずかに立ち現われています。この質感こそ虎徹の最大の魅力です。
地鉄(じがね)には様々な鍛着面の変化が表れています。また、刀の鎬地(しのぎじ)には川の流れのような肌(柾目肌:まさめはだ)も表れています。
杢目肌写真 1
杢目肌写真 2
【虎徹の刃文(はもん)】
刀の刃文は直刃(真直ぐな刃)調ながらごく浅く湾れています。
実は、刃文の形状よりも、この中に現われる働きと呼ばれる自然に現われた微妙な文様こそ重要です。
刃縁(はぶち:刃文の境界)から刃中に向かって冴えて明るい白い霧のような匂(におい)が広がり、ここに沸(にえ:刃文を構成している少し粒状に見える部分)が付いています。
虎徹写真 1
虎徹 写真 2
【虎徹の刃文 沸(にえ)の働き】
脇差の地鉄は大刀と同じ小板目肌ですが、焼刃は沸が強く、刃中に広がる匂の上に存在感を示しています。
小さな沸が鍛え肌に沿って流れているのも観察されます。いずれも、光を反射させて鑑賞すると、霧か霞のように漂う匂の中に真白な沸が輝いているのが分かります。
これが虎徹の刃文の本質です。
沸 写真 1
沸 写真 2
【刃中の働きに注目しよう!】
刃中の働き
虎徹の刃文の特徴は、数珠のように丸みを帯びて連続する数珠刃、瓢箪を縦割りにしたような形の瓢箪刃などと言われていますが、それらは単なる刃文の形状であり、鑑賞のポイントは、その中に現われている幽玄味ある働きであることを、まず最初にご記憶ください。
日本刀専門店 銀座長州屋