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私の正体は? ―鑑定刀 第十二回【解答】



【解答】

一振目:[正解]刀 銘 備前國住長舩孫右衛門尉清光作之

永禄五年八月大吉日




問題1は備前國住長舩孫右衛門尉清光作之 永禄五年八月大吉日の刀でした。

身幅が広く、先幅も広く、鋒が伸びています反りは高くついて、先反りがついています。

そして鎬地の肉がやや削ぎ落されて鎬筋が張った感じです。

こういう姿は戦国時代の刀だとわかります。(これはかなり大事な見どころですね)

寸法は二尺二寸二分と短めで、茎も短め片手で抜き放って使うのに便利です。

(この時代、ほんとはもっと長めの豪壮な作もありますが、これは二尺二寸二分、という特注の長さなのですよ)

まさに、戦国時代の刀ですね。(そう、造り込みと茎の長さでもう戦国時代かもとわかります)

地鉄は、小板目肌に板目を交えてよく詰んでおり、鉄色は澄んで透明感があります。

刃文は広直刃で、小足が無数に入って葉も浮かんで、匂口が締まって冴えています

帽子は焼が深く、僅かに掃き掛けて小丸です。

こういう刃文の作といえば、備前長舩清光、それも孫右衛門尉をいう俗名を切る清光の作にままあります。

(見た事ないよー、という人には申し訳ないのですが、ほんとにこういう感じなのですよ)

この刀、孫右衛門尉清光の典型的で、しかも出来抜群に優れた一振です。

地鉄は透明、そして刃縁の沸と刃中の冴え・・・白雪って感じがしますよ。綺麗です。そして・・・抜群に切れそう)

年紀は八月大吉日とあります。これも特別な年紀です。

ほぼ同じ年紀作が浦上宗景(備前天神山城の主。備前東部を支配した戦国武将です)の注文打ちにもありますから、これはいわば陰打ちか何かかも知れません。

全体の佇まい、刃文の景色(刃境に渦巻のような湯走りがあるなど)・・・こういうのを観たら

あ、孫右衛門かな、と思うようだと、相当刀を見てるなあ、って思いますよ。

(だからさー、見たことないんだってばー、っていう人はこの事をおぼえておいて、今度清光を観たら、あー、なるほど、と思いましょうね)

この時代の備前刀にはまず映りは立たないので、全体の景色から正解を手繰り寄せましょう。




刀 銘 備前國住長舩孫右衛門尉清光作之 永禄五年八月大吉日

Katana: Sig.Bizen no kuni ju Osafune Magoemon no jo KIYOMITSU saku

Eiroku 5 nen 8 gatsu o-kichijitsu



 


二振目:[正解]刀 銘 兼杦




問題2は美濃の兼杦の刀でした。

兼杦は名前からおわかりのように美濃国関の刀工で、時代は天文頃です。

伸びやかな姿で、鋒が長め。戦国時代の姿に似ています。

そして重ねに注目しましょう。棟重ねが一分九厘なのに鎬重ねは二分三厘です。

こういう刀の断面は菱形で、鋭く刃の通り抜けが容易な造り込みです。

こういう造り込みだなあと頭の中で想像して、あー、これは戦国ど真ん中の形だなあと思えれば

あなたはすごい!

そして刃文も尖った互の目が連続しています。あ、これ美濃?って思えればもう当たりです。

茎の細かな檜垣鑢も美濃刀の特色です。

浅く弛んで小丸に返る帽子の形は、お地蔵さんを横から見たような感じなので、地蔵帽子といいます。

美濃刀によくある帽子の形ですので、これは覚えておきましょう!

でも、兼杦の個銘を当たらなくても気にしない、気にしない。

室町後期、天文頃の美濃刀、兼の字の付く人・・・ってわかれば正解ですよ。

(ただし、こういう刀を誰かに見せてもらい、何だかわかりますか?って聞かれたらこう答えましょう。

「兼元ですか?」

そうしたら・・・もう大喜びでしょうから。ウソついてる?違います。コレクションを見せてもらったんですから、一格上に観て答える・・・これもマナーです。そして絶対にけなさないこと。これも覚えておいてくださいね)


刀 銘 兼杦

Katana: Sig.KANESUGI


 



以上です。

解答を出すのが遅くなってしまいました。

10月号はWebサイト上で公開しておりますので、出題した刀の解説ページも併せて御覧になってみてくださいね。














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