桟木透図鐔 銘 埋忠
桃山時代 81.2㎜×77㎜ 切羽台厚さ2.7㎜ 特別保存刀装具
埋忠家は元来刀剣の浄拭を専業とし、足利将軍家に仕えた家柄である。現在ではむしろ刀装具を製作した金工の名家としての知名度が遥かに上であろう。信長・秀吉が主導した桃山の芸術文化は我が国の文化史上において一際異彩を放っており、この時期に活躍した埋忠明壽も、往時の自由な桃山芸術に触発されて、家業に拘泥することなく刀装芸術の世界に挑戦したのであろう。 本作は、その埋忠明壽と同時期に製作された桃山時代の鐔。自然に打返された耳の仕立ては柔らかく黒化した黒錆の光沢と見事な調和を生み出している。侘び・寂びにも通じる明壽の芸術世界が滋味横溢として鐔面から滲み出るようである。
(銀座情報最新号掲載品)