新企画|私の正体は? ―鑑定刀 第二回【問題】
【第二回:一振目 ≪難易度:易≫】
刃長二尺三寸六分 反り七分五厘 元幅一寸五厘強 先幅七分五厘
棟重ね二分四厘 鎬重ね二分六厘強
鎬造。庵棟。身幅広く、反り高くついて中鋒やや延びた、美しい姿です。
地鉄は小板目肌密に詰み、細かな地沸の粒子が均一について、地肌は潤い、冴えています。
刃文、帽子の形状は押形の通りです。
刃文はこの刀工の得意の丁子乱刃です。
焼高い丁子に房のような形の刃、小丁子を交え、重なり合い、重花丁子の様相です。
刃縁沸の粒子が細かく、匂出来です。
(刃縁に荒沸が一切ついてません。これこそ、作者の非凡な才能と努力の賜物です)
刃縁は明るく、匂足入り、金線・砂流しが僅かにかかります。
帽子は乱れ込み、僅かに掃き掛けて小さく返ります。
茎は生ぶ。茎尻は剣形。錆浅い。化粧鑢つく筋違鑢が掛けられている。表に四字銘、裏には年紀と截断銘(截断が実施された地名と截断部位、そして切れ味)があります。
截断銘はこの刀工にはよくあります。
ヒント!! 後に受領して「□□介」となります。
【第二回:二振目 ≪難易度:やや難≫】
刃長七寸二分八厘 反りなし 元幅七分六厘 重ね一分六厘
彫刻 表 草倶利迦羅 裏 護摩箸
平造。庵棟。身幅尋常で無反り。小振りで引き締まった姿です。
地鉄は小板目肌詰み澄む。細かな地沸がついて、淡く沸映りが立っています。
刃文と帽子の形状は押形の通りです。
刃文は小湾れ刃。表裏揃う。匂口締まって冴える。
帽子は端正な小丸。
彫刻は表に早体の倶利迦羅彫、裏に護摩箸の彫があります。
茎は中程が張って先細く、魚の鱮(たなご)の腹を想わせる、独特の形です。茎尻は刃上がり栗尻です。
細かな切鑢が掛けられ、差表のほぼ中央に、目釘穴を挟んで五字銘があります。
【第二回:三振目 ≪難易度:難≫】
刃長一尺四寸一分五厘 反り三分三厘 元幅一寸二厘 棟重ね一分七厘
菖蒲造の脇差です。身幅広く、反りが浅くついています。(通常この工の作には多く見られません)
地鉄は小板目肌。地景が細かく入り、小粒の地沸が均一について、晴々とした鉄色です。
刃文、帽子は押形の通りです。
刃文は互の目に房形の丁子刃、尖りごころの刃を交えて高低に変化しています。
つぶらな沸がついて刃縁は明るいです。
互の目の焼頭の中に凝った沸が入って昆虫の目玉に譬えられる独特の刃形がみられます。
刃中に沸匂充満して明るく、金線・砂流しが微かにかかります。
帽子は浅く弛んで小丸に返っています。
茎は生ぶ。茎尻は剣形。浅い勝手下がり鑢。
目釘穴の下、鎬筋に沿って二字銘がある。
ヒント1!!:作者は長寿ですが、この脇差は若い時分の作です。他界した父の跡を継ぎ、家督を継承した翌年、二十歳頃の作です。八年後、〇〇大掾を受領します。
ヒント2!!:茎形もこの時代独特の形で、下から刃区棟区へ向かって広がって「百合の花」が想起されます。
(YouTube 銀座長州屋チャンネルの動画をご覧になられた方はピンときますね)
以上
第一回と同様、次月の月刊『銀座情報』(12月号)掲載品からの出題です。
今回は難易度別に三振、出題してみました。
如何でしょうか?
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