私の正体は? ―鑑定刀 第三回【解答】
【解答】
一振目:[正解]刀 銘 (菊紋)伊賀守藤原金道 日本鍛冶惣匠
問題1は伊賀守金道の二代の刀でした。
体配の「〇〇新刀体配」には、寛永という言葉が入ります。
慶長新刀は身幅広く元先の幅差がつかず、鋒がやや延びていますし、
寛文頃でしたら、元幅に比して中鋒が詰まって、反り浅いものです。
刃文は相州伝で、殊に鎌倉末南北朝前期の志津三郎兼氏を想わせます。これは初代も得意とした刃文です。
簾のようになる親族は、丹波守吉道です。
伊賀守金道、丹波守吉道、和泉守来金道、越中守正俊・・・彼らは兼道の子です。
称号があるというのが最大のヒントです。「日本鍛冶惣匠」という称号は、初代が大坂の陣で、家康の命に応え、100日間に千振の刀を打ったという功績によるものです。
それで刀鍛冶の惣匠として、刀工の受領を斡旋することにもなりました。
刀 銘(菊紋)伊賀守藤原金道 日本鍛冶惣匠(業物)
二振目:[正解]刀 銘 忠貞(雲州)
二振目は雲州忠貞の刀でした。良鉄を産した山陰の奥出雲の刀工です。元々の祖先は備前から来たようです。
この刀にも直調の映りがたって一見、応永備前を連想させます。
室町時代の文安、長享、永正、天文、文禄と続き、「雲州仁田郡住忠貞」「安倍平左衛門尉忠貞作 八月日」と銘した作があります。この刀は長享の忠貞の銘に似ています。
茎が刃上がり急な栗尻で、独特です。
刀 銘 忠貞(雲州)
三振目:[正解]脇差 銘 作陽幕下士細川正義[刻印]
弘化二年二月日
三振目の答えは細川正義の脇差でした。
茎の反りと鑢目と刻印が大きなヒントです。
正義の茎は如何なるわけか、独特の反りがついています。刀身の反りと茎の反りと二段になっているのが特色です。
正義は下野国鹿沼の出身です。お父さんも自身も水心子正秀門人です。
そして備前国美作藩松平家の抱工になり、江戸に住んで作刀しています。
〇〇幕下士は作陽幕下士で、作陽は美作です。
備前伝と相州伝の名手です。
この作は金線・砂流しが強調され、鋒も大きく、
兼光、長義らに代表される相伝備前を念頭に精鍛された作でしょう。
脇差 銘 作陽幕下士細川正義[花押] 弘化二年二月日
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