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私の正体は? ―鑑定刀 第十二回【解答】
- 銀座長州屋WEB編集部
- 2024年9月27日
- 読了時間: 4分
更新日:2024年10月3日
【解答】
一振目:[正解]刀 銘 備前國住長舩孫右衛門尉清光作之
永禄五年八月大吉日
問題1は備前國住長舩孫右衛門尉清光作之 永禄五年八月大吉日の刀でした。
身幅が広く、先幅も広く、鋒が伸びています。反りは高くついて、先反りがついています。
そして鎬地の肉がやや削ぎ落されて鎬筋が張った感じです。
こういう姿は戦国時代の刀だとわかります。(これはかなり大事な見どころですね)
寸法は二尺二寸二分と短めで、茎も短め。片手で抜き放って使うのに便利です。
(この時代、ほんとはもっと長めの豪壮な作もありますが、これは二尺二寸二分、という特注の長さなのですよ)
まさに、戦国時代の刀ですね。(そう、造り込みと茎の長さでもう戦国時代かもとわかります)
地鉄は、小板目肌に板目を交えてよく詰んでおり、鉄色は澄んで透明感があります。
刃文は広直刃で、小足が無数に入って葉も浮かんで、匂口が締まって冴えています。
帽子は焼が深く、僅かに掃き掛けて小丸です。
こういう刃文の作といえば、備前長舩清光、それも孫右衛門尉をいう俗名を切る清光の作にままあります。
(見た事ないよー、という人には申し訳ないのですが、ほんとにこういう感じなのですよ)
この刀、孫右衛門尉清光の典型的で、しかも出来抜群に優れた一振です。
地鉄は透明、そして刃縁の沸と刃中の冴え・・・白雪って感じがしますよ。綺麗です。そして・・・抜群に切れそう)
年紀は八月大吉日とあります。これも特別な年紀です。
ほぼ同じ年紀作が浦上宗景(備前天神山城の主。備前東部を支配した戦国武将です)の注文打ちにもありますから、これはいわば陰打ちか何かかも知れません。
全体の佇まい、刃文の景色(刃境に渦巻のような湯走りがあるなど)・・・こういうのを観たら
あ、孫右衛門かな、と思うようだと、相当刀を見てるなあ、って思いますよ。
(だからさー、見たことないんだってばー、っていう人はこの事をおぼえておいて、今度清光を観たら、あー、なるほど、と思いましょうね)
この時代の備前刀にはまず映りは立たないので、全体の景色から正解を手繰り寄せましょう。
刀 銘 備前國住長舩孫右衛門尉清光作之 永禄五年八月大吉日
Katana: Sig.Bizen no kuni ju Osafune Magoemon no jo KIYOMITSU saku
Eiroku 5 nen 8 gatsu o-kichijitsu
二振目:[正解]刀 銘 兼杦
問題2は美濃の兼杦の刀でした。
兼杦は名前からおわかりのように美濃国関の刀工で、時代は天文頃です。
伸びやかな姿で、鋒が長め。戦国時代の姿に似ています。
そして重ねに注目しましょう。棟重ねが一分九厘なのに鎬重ねは二分三厘です。
こういう刀の断面は菱形で、鋭く、刃の通り抜けが容易な造り込みです。
こういう造り込みだなあと頭の中で想像して、あー、これは戦国ど真ん中の形だなあと思えれば
あなたはすごい!
そして刃文も尖った互の目が連続しています。あ、これ美濃?って思えればもう当たりです。
茎の細かな檜垣鑢も美濃刀の特色です。
浅く弛んで小丸に返る帽子の形は、お地蔵さんを横から見たような感じなので、地蔵帽子といいます。
美濃刀によくある帽子の形ですので、これは覚えておきましょう!
でも、兼杦の個銘を当たらなくても気にしない、気にしない。
室町後期、天文頃の美濃刀、兼の字の付く人・・・ってわかれば正解ですよ。
(ただし、こういう刀を誰かに見せてもらい、何だかわかりますか?って聞かれたらこう答えましょう。
「兼元ですか?」
そうしたら・・・もう大喜びでしょうから。ウソついてる?違います。コレクションを見せてもらったんですから、一格上に観て答える・・・これもマナーです。そして絶対にけなさないこと。これも覚えておいてくださいね)
刀 銘 兼杦
Katana: Sig.KANESUGI
以上です。
解答を出すのが遅くなってしまいました。
10月号はWebサイト上で公開しておりますので、出題した刀の解説ページも併せて御覧になってみてくださいね。

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