私の正体は? ―鑑定刀 第四回【問題】
【第四回:一振目】
刃長二尺六寸六分六厘 反り三分五厘 元幅一寸三厘 先幅七分二厘
棟重ね二分三厘 鎬重ね二分四厘半
鎬造。庵棟。身幅広く重ね厚く、反り浅くついて中鋒。先幅も充分で姿には量感があります。
地鉄は鎬地が細かな柾、平地は小杢目肌。詰み澄んで、細かな地沸が均一についています。
あたかも透き通るような地肌。鉄質が余程良いと推察されます。
澄んで、冴える肌はこの刀工の独壇場で、同時代にこれ程にまで綺麗な地鉄となるのは他にいません。
刃文と帽子は刀絵図の如し。
刃文は直刃です。が、この刀工らしく浅く、ゆったりと湾れています。
帽子は端正な小丸。
茎は生ぶ。化粧付く筋違鑢。先剣形。銘字は目釘穴の下、鎬筋に沿ってやや棟寄りに、表は五字銘。
裏は表の第一字から一字上から年紀が刻されています。
この刀工は直刃の他に乱れ刃も得意です。
大海の大波を想わせる乱れ刃は同時代、そして後世の刀工にも大きな影響を与えました。
【第四回:二振目】
刃長二尺三寸八分 反り六分 元幅一寸一分 先幅八分一厘 棟重ね二分 鎬重ね二分二厘半
彫刻 表裏 棒樋丸止
鎬造。庵棟。身幅広く先幅も充分。反り高くついて中鋒。
姿は「〇〇新刀」と呼ばれる姿です。
地鉄は小板目肌詰み、細かな地沸がついて梨子地肌風となり、潤い感があります。
地景が網状に働いて、活力が感じられます。しかも透き通るような肌合い。
(刀剣界では、この刀工と一派の地肌を特に、「〇〇肌」と呼んでいます)
刃文と帽子は図の通り。
刃文は華麗な乱れ刃です。逆ごころの小丁子、尖りごころの刃を交えて高低に変化。
(この刀工は、おじいさんの影響か、直刃調で足が長く射した作が多いです)
互の目の中に葉というか凝った沸が観察されます。
帽子は浅く弛んで小丸。
茎は生ぶ。刃上がり栗尻。鑢目は横鑢。差裏、目釘穴を挟んで鎬地に十一字の銘が刻されています。
以上
いつもと同様、次月の月刊『銀座情報』(令和6年2年号)掲載品からの出題です。
今回は二振、出題してみました。
如何でしょうか?
クリックするとメールフォームへ飛びます。
Comments